はじめの一歩は「家計の棚卸し」から

「家庭に優しい」選択をするための大前提は、「我が家は、習い事に一体いくらまでなら無理なく使えるのか？」という上限額を、感情論ではなく数字で把握することです。

基本ルールは「手取り月収の5%」

多くの専門家が提唱する、家計を圧迫しない学校外教育費の目安は「手取り月収の5%」です。まずはここを基準に考えてみましょう。最大でも10%以内が安全圏です。

• 手取り30万円の家庭 → 15,000円（上限30,000円）
• 手取り40万円の家庭 → 20,000円（上限40,000円）
• 手取り50万円の家庭 → 25,000円（上限50,000円）

この金額は、子供が2人いる場合は「2人合わせて」の金額です。この予算内で、どう配分するかを考えるのが基本戦略。この「予算」という土台がなければ、どんな習い事を選んでも家計が苦しくなる可能性があります。

「本当に安いか」を見極める視点を持つ

予算が決まったら、次はその予算内で最適な選択をするための「比較の視点」を学びましょう。多くの人が陥る失敗が、「月謝」の安さだけで習い事を決めてしまうことです。

「年間で支払う総額」を計算しよう

家庭に優しい選択をするためには、月謝だけでなく、年間でかかるすべての費用を合計した「年間トータルコスト」で比較する必要があります。

• 月謝 × 12ヶ月分
• 入会金・事務手数料（初年度）
• 教材費・施設維持費など
• ユニフォーム・道具代
• 発表会・試合・合宿などの参加費
• その他（交通費・検定料など）

これらの項目を、検討している習い事ごとに書き出して合計し、12で割ってみましょう。その「月平均コスト」が、あなたの家庭が本当に負担する金額です。月謝3,000円の少年団サッカーが、年間で見ると月謝8,000円の書道教室より高くなる、なんてことも十分にあり得るのです。

お得で価値ある選択肢を知る

では、具体的にどのような習い事が「家庭に優しい」のでしょうか。ここでは、月謝が安価なだけでなく、追加費用が少ない、コストパフォーマンスに優れた習い事を厳選してご紹介します。

1. 書道（習字）

• 月謝目安：3,000円～6,000円
• 優しい理由：月謝が圧倒的に安く、高価な道具も不要。追加費用も半紙や墨汁などの消耗品が中心で、年間コストが非常に読みやすいのが魅力です。

2. そろばん

• 月謝目安：4,000円～8,000円
• 優しい理由：初期費用はそろばん本体（数千円）くらいで、高額な追加費用はほぼありません。計算力や集中力が身につくという、費用対効果の高さも魅力です。

3. 地域のスポーツ少年団

• 月謝目安：2,000円～8,000円
• 優しい理由：民間のクラブチームと比べて、指導者がボランティアの場合が多く月謝が格安。ただし、合宿費や親の負担（当番など）については事前確認が必要です。

4. 公民館・文化センターの講座

• 月謝目安：1回500円～ or 月額3,000円～
• 優しい理由：自治体が運営しているため、利益目的ではなく格安。ダンス、絵画、プログラミングなど種類も豊富。本格的な発表会などがない分、追加費用もほとんどありません。「まずはお試し」に最適です。

5. オンライン英会話

• 月謝目安：3,000円～8,000円
• 優しい理由：通学型の英会話教室（月1万円～）に比べて、半額以下の費用で始められます。送迎の手間や交通費もかからず、時間的にも家庭に優しい選択肢です。

6. 無料のプログラミング学習サイト

• 月謝目安：0円
• 優しい理由：「Scratch（スクラッチ）」など、無料で使える優れた学習教材が多数あります。いきなり教室に通う前に、まずは家庭で試してみて、子供の興味を見極めるのが最も賢く、家庭に優しい方法です。

「やめる」以外の選択肢を持つ

「すでに習い事をしているけど、費用が苦しい…」という場合でも、すぐに「やめる」と決断する必要はありません。今の習い事を、少しでも「家庭に優しく」するための工夫を試してみましょう。

• プランを変更できないか相談する：週2回コースを週1回に、個人レッスンをグループレッスンに変更するなど、より安価なプランへの変更が可能か教室に相談してみましょう。
• 用具の買い替え頻度を見直す：まだ使えるのに、新しいモデルが出たからと買い替えていませんか？安全に支障がない範囲で、一つのものを長く使う意識も大切です。
• 送迎はカープールを検討する：同じ教室に通う保護者同士で協力し、交代で送迎する「カープール」を導入すれば、親の負担とガソリン代を大幅に削減できます。
• 「休会制度」を利用する：家計が特に厳しい時期や、他のことで忙しい時期には、一時的に休会できる制度がないか確認しましょう。月謝を払わずに籍だけ残せる場合もあります。
• 思い切って「見直す」勇気を持つ：様々な工夫をしても、やはり負担が大きい場合は、「見直す」ことも家庭への優しさです。子供の興味が薄れていたり、目的が達成されたりしているのであれば、それは「やめどき」のサインかもしれません。

家族全員の笑顔が基準

最後のステップは、最も大切な視点です。「家庭に優しい」とは、お金だけの問題ではありません。親の「時間」と「心」に優しいかどうかも、同じくらい重要な判断基準です。

例えば、月謝は安くても、

• 教室が遠く、平日の送迎で親がヘトヘトになる。
• 親の当番が多く、休日のほとんどが潰れてしまう。
• 親同士のお付き合いが複雑で、精神的に疲弊する。

このような状況は、決して「家庭に優しい」とは言えません。親が疲れ切っていては、子供を笑顔で応援することも難しくなります。

習い事を始めたことで、家族の会話が減ったり、笑顔が減ったりしていないか？この点を常にセルフチェックし、家族全体の幸福度を基準に習い事と付き合っていくことが、真に「家庭に優しい」選択と言えるでしょう。